『Shades of Empire』レビュー 

 初めまして、ウォーハンマー翻訳チームで『ウォーハンマーRPG』の翻訳の手伝いをさせて頂いている鈴木康次郎と申します。このブログでは、TRPG関連の情報を発信していこうと思います。


 まずは、『ウォーハンマーRPG』の未訳『Shades of Empireサプリメントの紹介です。


Shades of Empire: Organisations of the Old World (Warhammer)

Shades of Empire: Organisations of the Old World (Warhammer)

  • 作者: Fantasy Flight Games,Eric Cagle,David Chart,Steve Darlington,Andrew Law,Jody Macgregor,Chris Pramas
  • 出版社/メーカー: Fantasy Flight Pub Inc
  • 発売日: 2009/01/14
  • メディア: ペーパーバック
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 このサプリメントは、発売元がFantasy Flight Game社に移管してから初めてのものになります。出版元の変更によって雰囲気が変わってしまったシステムがあったことや、発売が予定日から大幅に遅れたことなど不安な面もありました。しかし、実際手に取ってみると納得のいく完成度でした。


 ソフトカバーのモノクロ126ページで、エンパイアの9種類の組織の設定のサプリメントです。組織毎に章が設けられており、それぞれプレイヤーセクションGMセクションがあります。GMセクションにはサンプルNPCデータやサンプルマップも掲載されています。


 では、その内容を簡単に紹介しましょう。内容を取り間違っている箇所もあるかもしれませんが、ご了承下さい。また、英文の後ろのカッコ付けの訳語は私が勝手につけているもので、もちろん正式なものではありません。


 まずは、章題の紹介です。


第1章:Altdorf Dockers(アルトドルフの港湾労働者)
第2章:The Brothers of Handrich(ハントリッヒ修道士団)
第3章:The Dreamwalkers(夢歩き人)
第4章:The Glorious Revolution of the People(栄光の民衆大革命)
第5章:Hedgefolk(村外れの民)
第6章:The Imperial Navy(帝国海軍)
第7章:The Knight of Magritta(マグリッタ騎士団)
第8章:The Quinsberry Lodge(クウィンズベリー支部会)
第9章:The Roadwardens(街道巡視員)


 章題だけでも、ベクトルの異なる組織を扱っていることが判りますね。続いて、各組織の紹介です。



・Altdorf Dockers(アルトドルフの港湾労働者)


 ジャック・ヨーヴィルウォーハンマー小説『ベルベットビースト』に登場した“鉤団”や“魚団”などのGangについてです。


 このGangは、いわゆる犯罪組織のギャングではなく、この場合は荷役集団の意味ですが、前者のニュアンスもありありとある感じですね。他にも同じく小説に登場した“インキー”や“カール・フランツ盟友会”についての言及もあります。



・The Brothers of Handrich(ハントリッヒ修道士団)


 「商業の神ハントリッヒ教団の荒事部隊。それが、The Brothers of Handrich(ハントリッヒ修道士団)だぁ。恐喝に誘拐、俺たちゃ手を汚すのを躊躇しねぇぜ!」みたいな集団です。


 ハントリッヒってラナルドと違って合法的な商業の神様ちゃいますんって感じですが、一筋縄の設定ではない所が実にウォーハンマーらしくてよいですよね。



・The Dreamwalkers(夢歩き人)


 アンデッドと死霊術師を狩るモール信徒の集団。それが、The Dreamwalkers(夢歩き人)です。


 黒鴉騎士団に似た集団ですが、名前のとおりモールの夢による啓示を重視するそうです。新異能のMorrian Dream(《モール信徒の夢啓示》)が追加されています。



・The Glorious Revolution of the People(栄光の民衆大革命)


 詩人にして革命家のクロソウスキー公の革命組織で、彼もジャック・ヨーヴィルウォーハンマー小説に登場しています。10年前の失敗を活かし、「闘争は、鋼でなく言葉で勝ちうる」を方針にしています。


 新上級キャリアとしてPhmphleteer(ビラ職人)が追加されています。転職に活版印刷機が必要なのが何ともよいです。



・Hedgefolk(村外れの民)


 正当な似非魔術(この場合は俗魔術の方が近いと思います)の継承者たちが、Hedgefolk(村外れの民)です。『魔術の書』の「魔女」とは異なり、混沌寄りではない術者です。村外れの小屋に住み、村人に呪いや助言、秘薬を提供する“呪い婆さん”には、こちらの設定の方が相応しいですね。


 新しい魔法体系としてWitch Lore(Hedge)(《魔女の魔法体系(俗魔術)》)が追加されており、3つの新キャリアと新呪文が載っています。新呪文には、惚れ薬を作ったり、妊娠を確実にするものなどあったりして、楽しいです。



・The Imperial Navy(帝国海軍)


 帝国海軍です。表紙のイラストの親父は、海賊と信じて疑わなかったのですが、どうやら帝国海軍の軍人みたいです。よく見ると、“双尾の彗星”の護符をつけていますし。


 新上級キャリアとしてAdmiral(提督)が追加されています。海洋ものが好きな人には堪らないでしょうね。ハウスルールを作ってサルトサの海賊と船舶戦闘とか。



・The Knight of Magritta(マグリッタ騎士団)


 アラビィへの十字軍遠征をもくろむ、秘密結社の騎士団です。元ネタはテンプル騎士団でしょうか?


 新基本キャリアとしてCadet(士官候補生)が追加されています。



・The Quinsberry Lodge(クウィンズベリー支部会)


 ムートを離れて生活するハーフリングの権利向上のための組織です。クウィンズベリーとは家系と伝統を司るハーフリングの神です。


 “Shorties Go Home(どチビどもは、国に帰れ)”と家の扉に書かれるなどの虐待を受け、悲嘆にくれるハーフリング夫妻のイラストが載っているのですが、これがサークル仲間に大受け! ちなみに、その定例会での私の持ちキャラはハーフリングでしたOrz



・The Roadwardens(街道巡視員)


 はい、よくも悪くもPCたちが色々お世話になる街道巡視員の設定です。街道巡視員の砦のサンプルマップも載っています。これも色々使えそうですね。はい、よくも悪くも。