ハウスルール「騎乗戦闘」の紹介

 『ウォーハンマーRPG』は、GM裁量に頼る要素が多いシステムだと思います。何から何までルール化せず、遊び方に合わせてカスタマイズすることを前提にしているのでしょう。

 カチッとしたルールのシステムの方が遊びやすいのはもちろんです。でも、これはこれ独自の楽しみがあります。ハウスルールを、ああでもない、こうでもないと作るのもそのひとつですね。全体の整合性を崩さないように、納得度の高いルールを模索する。こう書くと大変なだけで楽しくなさそうですが、やってみると面白いですよ! 断片的なパーツから、模型をスクラッチする楽しさみたいな感じですね。

 今回は私のハウスルールを以下に紹介します。「騎乗戦闘ルール」です。「馬上槍試合ルール」は『オールド・ワールドの武器庫』にありますが、案外「騎馬戦闘ルール」そのものはないのですね。これじゃ、『堕落の書』で追加された乗用ディーモンも使いにくいと思い、作った次第です。




騎乗戦闘ルール



・騎乗戦闘ルールの概要


 騎乗戦闘とは、騎乗者が乗用動物を操りながら戦闘を行なうことである。

 騎乗者と乗用動物は、同一マスを占有する。

 騎乗者と乗用動物は、各々イニシアティブを決定し、乗用動物は騎乗者が命令を出すことで行動を決定する。

 騎乗者と乗用動物は、1ラウンドの間に双方で1回の攻撃アクションしか選択できない。



・乗用動物の制御


 騎乗者は、自分のターンに乗用動物を制御し、命令を出すことで騎乗戦闘を行なう。

 戦闘調教済みの乗用動物を制御するのは、フリー・アクションで、〈騎乗〉テストは不要である。

 「戦闘調教」(後述)をされていない乗用動物を制御するのは、半アクションを費やして、「手強い」(−10%)〈騎乗〉テストに成功する必要がある。



・乗用動物への命令


 騎乗者は、自ターンに乗用動物に「攻撃命令」か「移動命令」を行なう。

 「攻撃命令」は、指定した単体のクリーチャーを乗用動物に攻撃させることを命令することである。乗用動物は、自ターンに「移動」及び「通常攻撃」か、「突進攻撃」、「連続攻撃」を行なう。指定したクリーチャーが、乗用動物のターンに死亡していたり、移動して隣接できない位置にいる場合などは、騎乗者は「攻撃命令」を取り止めて「移動命令」に変更できる。

 騎乗者は、乗用動物に「突進攻撃」をさせた際、自分が「行動遅延」を行なっていたならば、乗用動物の代わりに自分が「通常攻撃」を行なうことが可能である。その際、乗用動物の代わりに騎乗者が【武器技術度】に+10%のボーナスを得る。

 「移動命令」は、乗用動物を移動させることを命令することである。乗用動物は、自ターンに「移動」か、「走行」、「戦闘からの離脱」、「飛び降り/幅跳び」を行なう。

 乗用動物が「走行」した場合、騎乗者にも遠隔攻撃と接近攻撃によるボーナスとペナルティーの影響を受ける。

 乗用動物が接敵状態から離れることでフリー攻撃を受ける場合、攻撃側は乗用動物でなく騎乗者を攻撃してもよい。

 乗用動物が、騎乗者から特に命令を受けなかった場合は、通常は自ターンに「行動遅延」を行なう。「戦闘調教」をされていなかったり、傷を負っていたり、《険相》の影響下にある場合は、敵から逃げる可能性もある。ディーモンなどの凶暴な乗用動物は、手近なクリーチャーに攻撃を行なうかもしれない。


例)騎士レオパルドは、軽軍馬に乗ってオークと戦闘を行なう。イニシアティブは、軽軍馬が36、レオパルドが33、オークが31である。まず、軽軍馬が命令を受けていないので「行動遅延」を行なう。次に、レオパルドがフリー・アクションで軽軍馬に「移動命令」を出し、自分は「行動遅延」を行なう。命令を受けた軽軍馬が6マス移動してオークに接敵した時に、レオパルドが馬上から軽ランスで「通常攻撃」を行なう。


・騎乗者及び乗用動物への攻撃


 攻撃者は、騎乗者と乗用動物のどちらでも選んで攻撃することができる。

 騎乗者の命中部位が右脚及び左脚だった場合、その攻撃は50%の確率で乗用動物の胴体に命中したことになる。

 騎乗者は乗用動物に騎乗している状態で、「回避」を行なうことは困難である。〈打撃回避〉の難易度が2段階難しくなる。ただし、騎乗者が《曲乗り》を持っていたのならば、このペナルティーは受けない。



・落馬


 騎乗者が「気絶」したり、乗用動物が転倒した場合、騎乗者は「落馬」する可能性がある。「落馬」したキャラクターは、鎧を無視するダメージ値0の命中を受ける。ダメージ・ロールの出目が10だったばあい、【敏捷力】テストを行い、失敗すると1d10がダメージに追加される。もし、乗用動物が飛行していた場合は、「転落」のルールを適用する。

 「落馬」は以下の状況で起こりうる。

 乗用動物が死亡したり、「無防備状態」になったり、脚が使用不可能になったりして転倒した場合。騎乗者は「手強い」(−10%)〈騎乗〉テストに成功しないと、安全に下馬できず「落馬」する。騎乗者が《曲乗り》を持っていたのならば、テストの難易度が1段階容易になる。

 乗用動物が「恐慌状態」になった場合。騎乗者は「手強い」(−10%)〈騎乗〉テストに成功しないと、パニック状態の乗用動物から安全に下馬できず「落馬」する。

 騎乗者が「無防備状態」になったら、自動的に「落馬」する。

 騎乗者が「気絶」した場合。乗用動物が攻撃アクションか「走行」、「飛び降り/幅跳び」を行なった時に、騎乗者は「困難」(−20%)な〈騎乗〉テストに成功しないと「落馬」する。

 騎乗者が、クリティカル効果で「転んで倒れる」結果になったら、自動的に「落馬」する。

 その他、絡みつき武器によって騎乗者が引きずる落とされることなどがありえる。



・乗用動物の「恐怖の虜状態」など


 「恐慌状態」になった乗用動物は、騎乗者の命令を受け付けず、彼を振り落として逃げ出そうとする。

 「恐怖の虜状態」になった乗用動物は、騎乗者の命令を受け付けない。騎乗者は、自ターンに半アクション費やして〈動物の世話〉テストを行なうことができる。テストに成功すれば、乗用動物はただちに再度「恐怖」テストを行なうことができる。この試みは1ラウンドに1度しか行なえない。

 《険相》の影響を受けている乗用動物は、その対象に近づこうとはしない。騎乗者がそのような命令を行なう場合、〈騎乗〉テストが必要になる。テストに失敗すれば、命令はフリー・アクションではなく、半アクションかかったことになる。騎乗者は自ターンに半アクション費やして〈動物の世話〉テストを行なうことができる。テストに成功すれば、乗用動物はただちに再度《険相》の効果に打ち勝つための【意志力】テストを行なうことができる。この試みは1ラウンドに1度しか行なえない。



・〈騎乗〉テストの難易度


 鞍及び馬具を装備していない乗用動物の〈騎乗〉テストの難易度は1段階難しくなる。

 鞍及び馬具を装備している乗用動物でも、両手に武器を持つなどして、鐙のみで操作を試みる場合、〈騎乗〉テストの難易度は1段階難しくなる。

 家畜の乗用動物の〈騎乗〉テストの難易度は2段階難しくなる。

 「戦闘調教」を受けた乗用動物以外の動物(例えばウルフ)の〈騎乗〉テストの難易度は1段階難しくなる。

 「戦闘調教」を受けた乗用クリーチャーの〈騎乗〉テストの難易度は2段階難しくなる。



・乗用動物の戦闘調教


 「戦闘調教」とは、馬などを戦闘中に乗用動物として使用できるように行なう訓練のことである。

 乗用動物を「戦闘調教」するには、1ヶ月以上時間を費やす必要がある。10日毎に〈てなずけ〉テストを行い、3回成功する必要がある。その動物またはクリーチャーの気性によって、難易度に修正が入る。馬の「戦闘調教」の難易度は「普通」(±0%)である。また、ペガサスなどのクリーチャーの「戦闘調教」は、特殊な訓練を受けた者しか行えない。

 「軽軍馬」及び「軍馬」、「ブレトニア産軍馬」、「ウォーポニー」は「戦闘調教」を受けているとみなす。また、「ディーモニック・マウント」などの乗用ディーモンも、全て同様に「戦闘調教」を受けているとみなす。

*従者の所持品の「馬」は原文もHorseであり、Riding Horse(乗用馬)でもLight Warhorse(軽軍馬)でもない。どちらに分類するかは、GM判断とする。


 このハウスルールは、「騎乗戦闘」に大きなメリットを与えないものにしています。

 「ランスによる「突進攻撃」は、ダメージ値に乗用動物の【筋力】ボーナスを加えることができる」みたいなルールも考えましたが、止めました。コーンのディーモンがジャガーノートに乗って「突進攻撃」してきたらダメージが洒落にならないというのは別にして(?!)、このゲームは基本的にダメージ値が上昇しにくいゲームと判断したからです。1上昇させるのにも大変なのに、使用状況が限定されるとは言え3〜4も上がるのはどうかなと思った次第です。

 機動性が向上するだけでも、乗馬するメリットが充分にあると判断しました。

 これは、あくまで私のハウスルールです。もちろん、公式でも何でもありません。これが、自分ならこうするという、何らかの叩き台になれば幸いです。