『ハーン』の紋章学

 今回は『ハーンマスター』の未訳サプリについてです。『ハーンマスター』は今年の頭で紹介させてもらったリアル系ファンタジーTRPGです。

 今年に入ってから数回セッションを行ない、未訳サプリを集めたりもしました。それで、痛感するのがやっぱりこのゲームはパネぇなぁということです。

 凄さのベクトルは色々ありますが、『ハーン』の場合はリアリティ・マニアがこだわりそうな部分を作り込んでいるという所です。まあ、マニアックに先鋭化するのが商業的に正義かというとそんなことはなく、そのこだわりと楽しさが比例するかというとそうともかぎりません。でも、実物をると「うへぇ」と唸らざるを得ないみたいな感じです。



 その実物の1例が地図です。はい、普通に等高線が入ってますね。『さすがハーン! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる! あこがれるゥ!』

 で、これって地図作成ソフトなどをパソコンで使えるようになったからこんな精緻な地図を作ったってわけでもないのですね。この前、1986年出版絶版サプリを海外通販で買いました。そしたら、25年前の手書きイラストの時代から地図から等高線を入れていたんですよ、奥さん! 欧米のクリエイターのリアルな架空世界を作りたいという気合いの入りようには時には唖然とさせられます。


 もちろん、凝っているのは地図だけではありません。貴族の紋章も力が入っています。紋章はファンタジーではそれなりにお馴染みのファクターですね。図柄的にああいうものが好きな方は少なくはないんじゃないかと思います。

 中世ヨーロッパにおいては、紋章の意匠は紋章学で体系化されていました。自分は詳しく知りませんが、分家だったらこうとか色々なルールがあったわけです。

 『ハーン』のデザイナーのN・ロビン・クロスビー氏は、紋章を見るだけで幸せになれる方だったと思います。紋章にえらいこだわりを感じますので。『ハーン』には国毎のサプリメントがあります。そこで当然のように王家や有力貴族の家系図が紹介されています。そして各貴族には個々に紋章が設定されています。シナリオで地方荘園の貴族が登場しますととりわけキーパーソンってわけでもないのですが、バストアップのイラストと共に紋章も載っています。こんな感じのがですね。



 これって、本格的ですよね。なんとなく決めたのではなくて、デザインに法則性を感じます。N・ロビン・クロスビー氏はリアル紋章学をかじっているか、または紋章学マニアの友人が手伝ってくれたか?

 これについては、ずばり『Heraldry』(紋章学)という名の20ページのサプリメントがPDF販売されています。このサプリのデザイナーはN・ロビン・クロスビー氏です。購入してみたところ、やっぱりこの人がリアル紋章学を消化していて、ハーン用にアレンジした法則を作っていたことが判りました。そして、このサプリメントはその法則を紹介して、騎士のキャラ用にオリジナル紋章を作ってみましょうというものです。

 幸いにして以下のサイトからサンプルとして数ページがダウンロード可能です。これで、どういうものかは理解していただけると思います。


http://watermark.rpgnow.com/pdf_previews/84574-sample.pdf


 嗚呼、マニアック! なんか、正にリアル紋章学の項目をウィキペディアで読んでいる感じですね。

 一応、PDFをダウンロードできない方がおられるかもしれないので、イラストを1点。



 紋章についてここまで細部が必要かというと、紋章好きしかあまり価値がないかも知れません。でもまあ、凄ぇなぁと思いますし、好きな所をこだわりましたという感じが好感を持てます。


 『ハーン』は来年にキャンペーンをまわしてみる予定です。プレイ経験をつめばレポートとかあげてみようと思っています。

 今年は激動の年でしたね。来年は皆さまにとってよい年でありますように。