傑作ゲーム『TORG』!

 遅ればせながら本年もよろしくお願いします。今年も楽しいTRPGライフを送りたいものですね。

 今回はちょっと趣向を変えて『TORG』の紹介です。本作は20年前の1993年に日本語版がでた絶版ゲームなのですが、自分の所属するサークルでは延々と遊ばれ続けている現役システムです。また、今年の最初の定例会で遊んだのもこのゲーム。


 やはり『TORG』の世界設定やルールが独特でかつ素晴らしいですね。大雑把ですが説明をば。


 このゲームの世界設定は、色々なジャンルをごった煮にしたものです。現代社会(とは言っても当時の90年代のものですが)が複数の異世界の侵略を受けます。例えば、イギリスは西洋ファンタジー世界の侵略を受け、フランスはサイバー技術を持った暗黒中世世界など。そして、侵略を受けた地域は世界をその異世界と同じものに改変されます。この侵略者に立ち向かうのがPCたち、我々地球人の英雄や、それに協力する異世界人たちになります。

 シチュエーションとしては全身タイツのアメコミヒーローとサイバーパーツを埋め込んだ近未来兵士、半裸の原始人が、アイルランドでゴブリンと戦ったりするなどは日常茶飯事。そしてこれらのごた混ぜのシチュエーションでも、各キャラが特色をだせ、かつ活躍できる素晴らしいシステムと世界設定になっています。しかも、原始人の棍棒とM16マシンガンをルール上、武器という1つのデータにざっくりと統合するようなものではありません。ハイテク兵器はハイテク兵器としてのデータをちゃんと差別化した上でそうしているのですね。

 まず、世界設定が秀逸です。各異世界はそれぞれのリアリティを持っています。「魔法」、「社会」、「信仰」、「技術」といった4つ分野がどれだけ発展しているかのレベルをもっており、その中ではその制約を受けます。例えば、「魔法」が存在しないレベルの世界では“魔法”の存在をイメージすることすらできませんし、「技術」が低い世界では電話の概念が理解できずもちろん利用することはできません。このため、ファンタジー世界では剣と弓が有効な攻撃手段になりえたりします。

 しかし、この世界設定では異なる世界のヒーローの特色を活かすのは難しいですよね。ここはよく考えられていて、PCは自分の世界観を保てる、その世界のリアリティに干渉可能な特殊な英雄という設定になっています。ただ、もちろん無条件でOKというわけではなくリスクを負うことになります。大魔法やサイバーパーツなど強力になるほど、扱いにくくなるわけです。

 後、ルール的にデータの有利不利はある程度カバー可能です。このシステムは1d20とカードを使用します(カードはとても練られたよいものなのですが、語ると長くなりますので今回は割愛します)。d20ロールですが、13〜14の出目なら+1ボーナスなど、ボーナスを与える形のものです。ただ、面白いのは出目が10(または習得技能なら20も)で振り足しが可能になる上方無限ロールなのです。振り足しは出目以外にもカードの効果やポシビリティ(本システムのヒーロー・ポイント兼経験点)でも可能です。なので案外30以上の値なども結構目にすることができます。データの差はこの無限ロールでそれなりに埋めることが可能です。

 それと、本システムの大変面白い点として、敵を無力化するのは物理的攻撃に限らない点です。〈挑発〉や〈トリック〉などの技能を使用することで、敵を弱体化させることが可能で、さらに達成値によっては「プレイヤーズコール」と言ってプレイヤーの思う通りのことが可能になります。

 例えば、敵に追われて高層ビルを駆け上がるPCたち。屋上にでると爆風と共に現れる敵の戦闘ヘリ。マッチョな坊主が袈裟を押さえて「いや〜〜ん、パンチラ〜〜」とやると呆気にとられたパイロットが操縦を誤って墜落。まあ、こんな感じにやりたい放題できるわけです。


 お頭の弱いマッチョ系はこういう搦め手に弱かったりして、本当に練られたシステムだと思います。どんなデータのキャラでも長所を活かせば、活躍できる可能性があるわけです。

 また、当たり前ですが出身の異世界によってキャラクターの個性付けがやり易い。ファンタジーの騎士様と、パンクなサイバー兵士、原始人が一緒に行動してカルチャーギャップが起こらないはずもないですね。それと、異世界毎に独特な世界法則があり個性化に拍車をかけます。例えば、アメコミ風の世界では善人と悪人しかいなくて、つねにドラマチックな展開が起こるようになっています。アメコミヒーローのキャラにとってそれが自然なことなんですね。また、世界法則に則ったルールとか、その世界独自のデータなどがあって個性付けのバリエーションは豊富です。

 キャラクター作りで言えば、キャラクターイメージそのままにデータ化しやすいですね。例えば、可愛いけど毒舌なアイドルを作りたいとします。他のシステムでは、防弾チョッキを着て銃を持ったり、呪歌や超能力などの戦闘能力や異能を持つことが望まれる場合が多いと思います。本システムでは、誰かを説得したり、敵をなじったりするだけで十二分に活躍可能です。


 世界設定を味わい、仲間とのロールプレイで盛り上がり、口八丁手八丁でドラマチックな冒険活劇を楽しむ。10年以上プレイしていて、大体こういう流れになることが多いですね。そういう風に盛り上がるようにできているのですね。本当に凄いシステムです。


 ただ、残念な点で言えば流石に90年代の“現代”は古臭さが否めないこと。そしてなにより絶版で、入手が極めて困難な点。TORG1.5版が海外で出ていますが、Amazonで品切れ、RPG NOWなどの海外大手ダウンロードサイトでは取り扱っていない状態。

 しかしながら、日本では根強い人気があり、オンリーコンベンションが東京で毎年開かれています。また、素晴らしい紹介記事を書かれているサイトもあります。興味を持たれた方は調べられては如何でしょう?