『ウォーハンマー』初心者対応セッション作成テク
今回は久々に『ウォーハンマーPRG』について。
現在、申し訳ないことに『基本ルール』の在庫が切れており、Amazonでプレミアがつた状態です。ですが、こんな状況でも新たに遊んでくれる方々がいます。本当にありがたいことです
- 作者: クリスプラマス,Chris Pramas,待兼音二郎
- 出版社/メーカー: ホビージャパン
- 発売日: 2006/12/28
- メディア: 大型本
- 購入: 2人 クリック: 81回
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以前からホビージャパンに増刷の要望をだしています。実現はしていませんが、『ウォーハンマーRPG』体験会をホビージャパンがサポートしてくれているように脈が全くないわけではなりません。ユーザーからの要望の声が多ければ、実現する可能性もあると思いますので、よろしくお願いします。
で、今回は自分に可能なサポートということで、初心者用シナリオについてのネタを数点紹介します。
シナリオ作成のコツについては以前も紹介しております。
http://d.hatena.ne.jp/Yasujirou/20110526
今回の初心者対応シナリオは自分ならこうするというものにすぎません。どういうセッションを目指すかは、マスターと参加者によってかなり幅があるシステムだと思っていますので、参考程度に。
初心者対応セッションを試行錯誤するうちに得た方針は以下の通りです:
1.プレロールドキャラは使用せず、当日作成する
2.初期キャラにせず、下駄を履かす
3.背景世界が魅力的なシステムだが、独特な設定を詰め込みすぎない
1についてですが、他のシステムの初心者対応セッションなら、アーキタイプやプレロールドキャラを使用する方が相応しい場合が多いでしょう。
ただ、『ウォーハンマーPRG』の場合は、キャラメイクから行なった方が上手くいく場合が多いと思っています。
ぶっちゃけて言うと、キャリアをランダムで決定されるなどのままならなさこそが、本システムの世界観を表す個性だと思うからです。プレイヤーがPCのキャリアを“炭焼き人”と“用心棒”から選ぶという行為自体がウォーハンマーの世界観を如実に語っているのです。
後、キャラメイクした方が、ルール把握がスムーズだと思います。能力値がパーセンテージなので、作成時に何が得意かイメージし易く、また、技能を書き写すことで何ができるか頭に残り易い。
プレロールドキャラの方が戦闘バランスをとり易いなどのメリットもありますが、キャラメイクする方が価値が高いと思っています。
2についてですが、本システムは基本的にカライものです。他のシステムは基本成功率を50%程度にする場合が多いのに、ウォーハンマーでは30%台程度。更に条件によってこれが半減したりします。なので、多少底上げをしても罰はあたらないかなと思います。
能力値については、「2d10の平均値が11以上になるまで再ロール可能」とか「2d10の出目を他の能力値のものと入れ替えを1回可能」などしてもよいと思います。元々判定が失敗する可能性の高いシステムです。能力値が低いと、その不満が強くなります。人間で【武技】が26と32の場合では、失敗した時に不満度が前者の方が高い場合が少なくないと思っています。下駄をはかせても10%以上の差がでることも稀なので、別にいいんじゃないかと判断しています。
後、経験点を100〜200程度渡して成長させてもらうパターンが多いです。初期キャラは1〜2回成長できるかできないかで、強さが格段に違います。この成長で、攻撃回数が増え、【筋】ボーナスがあがるという場合もありえるわけです。これによりセッション中の事故がそれなりに減ると思います。
3についてですが以前はどうしても詰め込みすぎてしまう傾向がありました。試行錯誤の内、コアな題材は1点だけでも充分だと思うようになりました。後、セッションもキャラメイクを前提にして短めに。チュートリアル的戦闘、短めのアドベンチャーパート、ラストバトル程度で充分かと思っています。D&D4版風にいえば非戦闘遭遇1回と戦闘遭遇2回ですね。ルール確認事項などがあるので、この程度でも3〜5時間程度かかります。初セッションはあっさり目にして、後はプレイヤーと雑談などする方がいいかなと最近思ってます。
で、実際に初心者相手にどういうシナリオをするのか? ネタを3つあげてみます。
1つめは「墓荒らしシナリオ」。ウォーハンマーの墓荒らしは埋葬品を狙うのではありません。オールド・ワールドでは科学的医学が発展している最中で、その進歩には解剖が必要不可欠。しかし、遺体はモール神殿が厳重な管理の元、埋葬している。そこで、遺体を盗むという罰当たりな犯罪行為が必要になってくるわけです。
こういう設定は他のシステムでは珍しいものです。戦争難民のPCたちは、強面でガタイのよいお兄さんたちの斡旋により、墓荒らしという医学の発展に不可欠な綺麗な汚れ仕事に就任という形でセッションスタート。セッションの中身は墓荒らしたちの内紛に巻き込まれるとか、摘発から逃れるとか、持ち帰った死体が死霊術により暴れ出す等など。
2つめは「通行税シナリオ」。やはり、これもあまり他のシステムにはないものですね。昔、友人のセッションで「通行税を払ったら町からでれなくなってしまったっ!」ということがあり、今でも印象に残っています。また、オールド・ワールドではエルフ耳税とか酷いものもあり楽しいですね。
セッションへの応用ですが、関所で特別通行税が取られることになり大渋滞が起きているというシチュエーションでスタート。PCたちは関所破りをやらざるを得なくなったり、巻き込まれたり。また、通行税を工面するために前の馬車宿で危ない橋を渡らざるをえないとかでもいいですね。
3つめは「難破船漁りシナリオ」。難破船という題材は、その困難を克服する、救出するという方面で使用されることが多いです。オールド・ワールドには難破船荒らしというキャリアがあります。食うに困ったら難破船荒らしをする、さらに船が難破するように仕向るみたいな人たちがいるわけです。今回は視点を変えて難破船を漁るという行為をすることでオールド・ワールドを満喫してもらうのが趣旨です。
セッションですが、戦争や不作のためにPCたちの村は飢えていた。昨晩の大嵐、長老は海神ママン様のお恵みと言った。きっと、浜辺に何らかの漂流物があり村を潤してくれると。PCたちはウキウキしながら、浜辺へと向かうみたいな導入で。漂流物を河賊たちと奪いあうとか、漂流物に風変わりな木箱があり、そこから……みたいな膨らまし方ができますね。
初心者シナリオのネタに混沌は不可欠と思っていましたが、最近はそこまではこだわっていません。大きなネタなので2回目以降でじっくりとりあげるのでもよいかなとか思っています。
最後に別のテクニックの紹介をば。卓分けなどでGMがセッションの紹介をする場合がありますね。知名度の高くなくアクの強いシステムでセッションをやる場合、この紹介、いわゆるプレゼンがとても大事と思っています。卓が成立しなければシナリオを回せないので、シナリオの中身よりもプレゼンの方を磨くことの方が大事だとさせ思っています。
このプレゼンですが力を入れていることが数点あります。
1つめが、マスター自身の売り込みです。具体的には自分はプレゼンで笑いをとるようにしています。短期間のスピーチで聴衆を笑わすテクニックをもっているマスターは、セッション中でも笑わせてもらえる可能性が高いです。システムではなく自分をアピールすることで、楽しいセッションになることを印象付けます。
2つめが、セッションのベクトルを具体的に説明すること。ダークファンタジーということから受けるイメージは人によって千差万別。できるだけ具体的な例を挙げて説明した方がよいと思います。
3つめが一番大切ですが、自分の熱意、自分が楽しんでいることを伝えること。共に楽しもうという真っ当な熱意があって、それが普通に伝わればそれなりの結果がついてくる場合が多いと思います。
機知に富んだ会話とかは個人のセンスが問われます。それに比べて、プレゼンのスピーチはテクニックと経験による所が少なくないと思います。マスタリングテクニックと、まあ似たようなものですね。まず、これはいいと思うものを真似て、何度かやってみます。それから、目的に合わせて改良する、自分の言葉に直していくなどをしていけば、ある程度のレベルまでにはなるかと思います。最終的には自分で考えて、自分の言葉で語るということが大事ですね。まあ、これもマスタリングと同じですね。
テクニックまで落としきれていない部分がありますが、何かしらお役に立てれば幸いです。よい、ウォーハンマーライフをっ!