ダーク・サンの都市(その2)

 今回もD&D4版ダーク・サンの都市の説明で、2つ紹介します。対象的な妖術王――“引き篭もりインテリおたく”と“超体育会系兄貴”が支配する都市です。ダーク・サンの都市国家は、簡単に言えば妖術王のために存在します。妖術王は、英雄級のクリーチャーが何百体いても歯が立たない神話級クリーチャーです。絶対的な存在なら社会を超越した立場に立つことも可能だと思うのですが、実社会と接点を持つばかりかそれを支配しています。これは悪属性ならでの支配欲を満たすためであったり、社会的な権力を持つことが目的でしょう。また、最終的に生贄にすることを考えているはずです。この世界のラスボス級の妖術王は自分の都市全部を儀式の触媒にして、ドラゴンへと転生していますので。しかし各都市国家が似たようなものかというと、そうではなく、妖術王の社会に対するスタンスでだいぶ様子が異なります。そこで、ネビネィとウリクを紹介します。


 まずは、“尖塔都市”ネビネィについて。

 この都市は何と言っても、ソーサラーキングがユニークですね。都市に“ネビネィ”と自分と同じ名前をつけ、“影王”(Shadow King)という二つ名をもっている。2千年以上引き篭もって妖術の研究を続けていたけど、そこまで圧倒的に強くない(29レベルだけど単独でなく精鋭)。この都市の寺院守護者は“寺院妻”(Templer-Wives)と呼ばれ、形式的に“影王”の嫁であり構成員のほとんどがヒューマンとハーフエルフ。“寺院妻”の下位の実行部隊は“影の花嫁”(Shadow Bride)という名前。そして彼には、無謀な実験により怪物と化した皇子がいる……いやぁ、何か引き篭もりの妄想をそのまま形にしたような感じがナイスです。

 で、影王様は妖術の研究とおねぇちゃん以外は関心が薄かったらしく、都市の運営は部下に任せていました。この都市の貴族階級は水源を持っていることから特権階級化し、頽廃した怠け者になっています。ただ、この都市自体は裕福であり、質はどうであれパトロンとなりえる貴族がいます。舞踏などの文化も他の都市と比べて発展しています。そして、ここの住人は“尖塔都市”ネビネィこそがアサス唯一の文化圏であると思っていること。妖術王のオタク気質と引き篭もりによって、他の都市と比較したら文化的な都市なのでしょう。まあ、頽廃と陰謀がつきものらしいですが。

 逃亡奴隷とか剣闘士はダーク・サンの王道的な題材ですが、ネビネィでは権力闘争とか商館同士の妨害工作なども問題なく扱えると思います。“寺院妻”を辞めた逃亡妻みたいなキャラを作るのも楽しそうですね。


 続いて“獅子王都市”ウリク。

 この都市の支配者ヘマニュは、最も実社会に関心を持っている妖術王です。最強の軍隊国家を目指しており、ウリクの軍隊は負け知らずで、ヘマニュ自身は戦いで逃走したことは一度もないとのこと。ヘマニュを頂点とした規律正しいピラミッド社会を構成しており、この妖術王は、軍事は無論、内政についても自ら関与し、司法についても「ヘマニュの掟」に細かい分野まできっちり決まり事を作っているとのこと。

 このようにウリクは軍事色が強い都市です。自由都市タイァに対するライバル的な立ち位置でしょうか? シナリオでは自由都市タイァに対する脅威とか、そういう扱われかたがやり易いでしょうね。後、意外なことにウリクの陶芸はアサスで一番とのこと。交易商の護衛としてこの都市に入ったPCたちがトラブルに巻き込まれてなどもやり易いでしょうね。


 アサスはレルムやグレイホークと比べて世界の規模は狭いです。ただ、その分、各都市に差別化を図っている印象ですね。どの都市出身であるかということは、キャラクター付けの大きな要素であるのでしょう。