リアルな中世剣劇『アイアンクラッド』

 今回は趣向を変えて西洋中世剣劇の映画『アイアンクラッド』の紹介です。



 イングランドの灰色の風景の元、陰鬱な面立ちの髭親父たちの籠城戦。泥臭くリアルな殺陣、刃や鈍器が肉と骨を砕く! くぅ、俺得!

 東京でしか映画館で上映されなかった本作、DVDが発売されていたので買ってみました。ちなみに、TUTAYAでレンタルもされています。


アイアンクラッド [DVD]

アイアンクラッド [DVD]


 13世紀イギリスの“マグナ・カルタ”にまつわる内戦を題材にした作品。主人公のテンプル騎士、キーパーソンのジョン王や男爵は、そのままヒストリカル・フィギャが動いたような感じで様になっていました。この存在感はグッドです。

 特に暗君のジョン王の演技が良かったですね。ただの迷惑な悪人って感じではなく、そうなった背景が透けてみる感じで。王の器ではない人間が大任を担うために自我を肥大させ、強硬に箔を求めて失敗し、己の権威に泥を塗られる。余裕がないからこそ、執拗な復讐を行なうが、その表情から自信や安心めいたものは伺えないみたいな。


 そして、この映画の肝は、何と言っても剣や斧、鎚などを使った肉弾戦。

 リアル志向なのでスタイリッシュな殺陣ではないのですが、その分、迫力がありました。

 テンプル騎士が両手剣で戦うのですが、刃を手で持って柄で相手の頭部を殴打するシーンがありました。以前紹介した『中世ヨーロッパの武術』に柄で相手を打ち据える戦い方が載っており、『おぉ、これか!』と興奮しましたゼ。

 本作はこういうネタの宝庫です。鈍器の柄頭が小ぶりなのもリアルで雰囲気がある。鎧で身を守った者に中々致命打を与えることができず、転倒させてから皆で滅多打ちにするなど。武器による一撃で肉が爆ぜ、骨にひびが入るかもしれませんが、急所をやられない限り、興奮状態の人間がそうそう動きを止めないって感じなのでしょうね。戦いの後に破傷風などで命を落とすことがあったとしても。

 そうそう、破傷風にならないように切り傷を熱した刃物で消毒するシーンもあり、これもニヤリとするシーンでした。


 ここまで読んでワクワクする方は、本作お勧めです。また、『ウォーハンマーRPG』や『ハーンマスター』が好きな方は一見の価値があると思います。逆にリアルな剣劇に魅力を感じない方はあまり面白い映画ではないかな?


 最後に別の中世のネタ本について。


中世兵士の服装

中世兵士の服装


 マール社から発売された中世兵士の衣装のコスプレ写真集です。コスプレといっても本格的。絵画から当時の衣装を検討、さらに当時の素材でもって再現したものです。衣服の構造や着心地についても言及されていますし、小物や女性の服装も取り上げてます。

 鎖帷子の下に粗めの素材の衣服を着ると布に鉄の輪が食い込んで鎧が固定されたとかあり、なるほどと嬉しくなります。

 値段も1,680円と資料本としては安めで、お勧めです。衣類の構造につていも詳しいので、中世ファンタジーのイラストを描く人などにも資料としての価値が高いと思いますよ。