中世イングランド版『混沌の渦』!

 今回は『混沌の渦』の中世イングランド版、『Maelstrom Domesday』について。資金調達サイトKikcstarterで投資の募集があったので一口乗ったところ、β版のPDFが送られてきたので簡単なご紹介をば。


 まず初めは『混沌の渦』の紹介です。こちらは1988年に翻訳版が文庫ででています。『ロードス島戦記』の小説が初めて発売されたのと同じ年で、TRPGの存在自体、そもそもファンタジー世界の情報が少なかった時代の話です。


混沌の渦 (現代教養文庫―ロールプレイング・ゲーム)

混沌の渦 (現代教養文庫―ロールプレイング・ゲーム)


 当時、『ウォーロック』というゲームブック専門誌がありまして、こちらが『ファンティング・ファンタジー』の流れでTRPG関連もとりあげていました。自分がTRPGの存在を知ったのもこの雑誌のお陰。そのラインで発売されたのが『トンネルズ&トロールズ』(山本弘氏がプレイ紹介漫画を書かれていましたね)。これらや『ロードス島戦記』は単体の作品だけでなくてTRPGファンタジーの紹介記事としても活用していました。『T&T』の巻末の武器紹介でフランベルジュの形状が判ったりしたものです。


 その社会思想社が『T&T』の次に発売した文庫タイプのTRPGが『混沌の渦』です。しかし、本作は傾向ががらりと変わり16世紀ヨーロッパを舞台にしたリアル系の作品だったのですよ。読んでみて「何じゃこりゃ?!」って感じでしたよ。ゲームブックで主人公が“冒険者”や“宇宙船乗り”とかはありましたが、“君はロンドンの仕立屋だ”とか言われてもどないすんねんみたいなw

 『混沌の渦』は結局、基本ルールのソロアドベンチャーを遊んだだけで、実プレイはできなかったです。当時、リアルな16世紀ヨーロッパはなかなか想像できなかったので。ただ、それでお終いだったというわけではなく、中世の資料、読み物として活用させてもらいました。巻末の30ページを超す薬草一覧とかいかがわしくてよかったですね。これらのテイストは1991年に発売された『ウォーハンマー』にも活用させてもらいました。

 なんだかんだいって思い入れのあったシステムの一つでした。



 その『混沌の渦』がファンの間で遊ばれ続けていて、今回1086年の大ブリテン島を舞台とした『Maelstrom Domesday』のプロジェクトがスタートしたわけです。


http://www.arion-games.com/MaelstromDomesday.html


 ちなみにリンク先の左下にある“ど中世”テイストなイラスト。ルールブックにも結構のっていますよ。こんな感じのイラストを載せるのは『ハーン』だけじゃなかったのですねw


 β版の中身を簡単に紹介しましょう。和訳は適当なものなのであしからず。

 本作は以下とおり構成されています。

 第1章 導入
 第2章 キャラクター作成
 第3章 ゲームルール
 第4章 戦闘
 第5章 魔術および混沌の渦
 第6章 レフリーへの忠告
 第7章 動物誌
 第8章 1086年の生活
 第9章 ヨークおよび周辺地域
 付録1 病気
 付録2 薬草
 付録3 タイムライン


 薬草に20ページ近くさいているのは流石というべき。後、動物誌に動物だけでなく、悪魔や狼男なども載っていますね。完全な歴史物ではなく、当時の住人が“いる”と信じていた怪物も扱っているのですね。

 また、魔術も司祭の悪魔払いなども存在します。魔術はざっと目を通したところ『混沌の渦』と同じような感じです。いわゆる固有の呪文などはなくて、魔術師は因果律に干渉して自分の望むような出来事を起こすことが可能という具合。例えば、看守が“たまたま”大あくびをしている間に、側を通り抜けるみたいな感じですね。



 ルールは1d100のパーセントロールが基本。能力値は10種類あり、パーセントロールにこれらを使用します。例えば、接近戦技術が44なら44%以下で成功とかですね。これらとキャリアのルールは『ウォーハンマー』に似ている感じですね。

 キャラクターは14才から経歴がスタート。人種や生まれをランダム決定し、キャリアを決定。キャリア毎に、経歴年数、能力成長、獲得特技、獲得アイテム、関連イベント表が決められいてます。まず、経歴年数分年齢を増加させ、能力値成長。これらは、「持久力+1d10」のように成長幅がランダムになっています。アイテムはアイテム毎に入手確率が設定されています。関連イベント表は「軍事」や「旅」などのキャリアに関連のあるイベント表をロールして経歴中に何が起こったかを決定。最後に1d100して自分の年齢以下ができればキャラクターメイキングは完成。そうでなければ、転職表を1d100して次の経歴を決定。これは必ず別のキャリアになるというものではありません。例えば身分の安定している騎士ならば88%の確率で騎士のまま。逆に鉱夫は元のキャリアにいる確率は42%とか。こうして1d100で年齢以下がでるまで、最大6回まで経歴を積みながらキャラクターを作成する感じです。

 ちなみに、特技ですがこれにはランクがあり6段階まで習得可能です。例えば農業1なら基本的な作業ができるようになり、農業2に成長させると判定に+10%のボーナスを得るなどです。


 まあ、どんなものか試しにやってみましょう。バートランド君はノルマン人の農民の生まれ。16歳までは召使いとして荘園領主に仕えました。そして彼はこの時期に熱烈な恋に落ちました。次に21歳まで薬草師として働きました。どうやら恋の相手は薬草師だったのかもしれません。彼はこの時期、巡礼地へと続く道において奇跡を目撃しました。ここで年齢以下の出目がでたので彼の経歴は終了。自然とキャラクターに肉付けされていく感じがいいですね。



 全体的にルールは簡単そうなのだし、英文も読みづらいものではないので製品版がでたらプレイしてみようと思っています。