『The Slaying Stone』をプレイしました

 今回は、D&D4版の未訳シナリオ『The Slaying Stone』の紹介です。


 これは1レベル用シナリオで、『シャドウフェル』から始まるHシリーズに対して、HSシリーズと銘打たれています。


The Slaying Stone: Adventure HS1 for 4th Edition D&D

The Slaying Stone: Adventure HS1 for 4th Edition D&D


 物語の導入はこんな感じです:かつてネラス帝国の宝石と呼ばれたキリス・ダーン。しかし、ヒューマンの帝国の滅亡と共にこの都市はゴブリンの襲撃を受けて占領され、今はゴリズバッドと名前を変えられた。しかし、この都市にはまだ秘宝が眠ったままである。特に“殺戮石”と呼ばれるレリックが。悪の勢力がこの石に目をつけた。これを阻止できるのは、英雄たる君たちだけなのだ!


 ページ数は32ページ。両面使用可能な見開きマップが1枚ついてきます。コンパクトなわりに、シナリオのギミックが凝っていて、自分の好みでした。


 1レベル用の公式市販シナリオといえば『シャドウフェル』ですが、日本には『The Slaying Stone』の方がD&D4版のスターターシナリオとしては合っていると自分は思います。その理由は以下の通りです。



シナリオ全体がコンパクトであり、かつ調整がしやすい
 日本とアメリカのTRPGのプレイ環境はかなり違います。『シャドウフェル』はまさにアメリカンサイズのダンジョンを攻略するのがダンジョンハックシナリオ。がっつり時間をかけてやる作品です。コンベンションや定例会で、お試しに触ってみるにはスケールが大きいかと思います。メインのダンジョンに入る前までをやるなど、一部分をお試しプレイすることも可能ですが、やはりセッションでは起承転結をつけたいものです。その点、『The Slaying Stone』はコンパクトにできています。さらに、各遭遇を省略したり調整がしやすいシナリオなのです。導入にあるようにPCたちはゴブリンに占拠された街に潜入します。この街である場所に行ったらこの遭遇が起こるという形になっており、遭遇自体は独立しています。ですので、省略したりするのは簡単だと思います。また、シナリオを拡張するフックが用意されており、遭遇数を増やすことも比較的簡単にできます。


ダンジョンハックだけではない
 『The Slaying Stone』は、ひたすらダンジョンを潜るというシナリオではありません。導入からも判るとおり、ゴリズバッドに潜入しての探索がメインになります。街に潜入する技能チャレンジ、潜伏し続ける技能チャレンジなどが用意されています。もともと、「どうやって気づかれないように街に潜り込もう?」とPCたちが考えやすいシチュエーションなので、技能チャレンジの形でアイデアを出してもらいやすいかと思います。

 また、日本では物語性の強いシナリオ、PCの動機付けがちゃんとあるシナリオが好まれる傾向が強いかと思います。本シナリオは目的がはっきりしているので、判りやすいですね。さらに、巻末には本シナリオ専用の「背景」と副次クエストがあります。日本ではお馴染みのPC用ハンドアウトですよね、これって。例えば、「キリス・ダーンの住人」という背景では、2年以上前にこの街に住んでいた住人になり、クエストは「思い出の品を探せ」になります。行方不明の姉の思い出の品を探しに街に戻り、「この街を汚しやがって……糞ゴブリンどもめが!」と言い放つ。そして姉の大切にしていた指輪を、鼻輪にしているいかついゴブリンがいたら? いい感じじゃないでしょうか?


モンスターデータが最新版
 モンスターデータと戦闘バランスが最近のものになっています。モンスターは、『シャドウフェル』と比べて、火力が高くなった半面、打たれ弱くなっています。戦闘がより派手でスピーディになっています。戦闘バランスも『シャドウフェル』と比べてマイルドかなと思います。


マップの準備が簡単
 やはり、マップの準備がDMの手間の1つだと思います。本シナリオのマップは、付属マップでかなりカバー可能です。それ以外もDungeon Tiles Master Set:The Dungeonで簡単に作成可能になっています。お手軽にできるってのはありがたいのですよ。



 で、このシナリオを定例会でプレイしてみました。プレイヤー5人。4人は学生で、その内D&D初心者が2名、D&Dプレイ経験1〜2回の方が1名いました。そして、この内の2名はTRPG歴が1年未満の方です。後、1名はベテランの社会人です。

 D&D初心者の1名が事前にキャラメイクをしており、シャードマインドの魅力型パラディンでした。初心者対応ということで、パワーデータなどをすべて記載したオリジナルキャラシーを作成。他に出来合いキャラとして、エルフの凝息心央モンクとドワーフの最前線型ウォーロード、ヒューマンのウィザードを用意しました。他のメンバーにルールを説明している間に、ベテラン・プレイヤーはドラゴンボーンの天体ソーサラーを作成。


 セッション自体は4時間程度で終了。戦闘遭遇4回、技能チャレンジ3つを行なうことができました。初心者セッションとは思えないスピードです。戦闘がスピーディに進んだのは、初心者とはいえカードゲームなどの経験が豊富でコツをすぐに飲み込んでくれたことがあると思います。しかし、やはり戦闘バランスの変化が要因でもあると思います。技能チャレンジの方は、チャレンジのベクトルが判りやすかっためにこれまたスムーズに行うことができました。


 色々盛りだくさんで、ラスト戦闘も緊迫したものになり、参加者からは面白かったと言ってもらいました。

 残念なことにこのHSシリーズ、本作以外には5レベル用のシナリオがでているだけです。その5レベルシナリオは未プレイですが、なかなかアイデアがつまっていて楽しそうですよ。展開していって欲しいものです。