スケイブンと私

 昨日『Children of the Horned Rat』をプッシュしたとおり、自分はスケイブンに思い入れがあります。今回は、その原因になったあるセッションについての昔話を紹介します。


 自分の所属するサークルでは、毎年二回合宿を行っています。国民宿舎にひき篭り、数日間ゲームをやり続けるという非常に楽しいものです。合宿3日目の深夜などなると、ゲームばかりして脳みそがいい具合に蕩けている所に、寝不足などが加わって、かなりハイテンションになります。更にアルコールが入ると、そりゃもうって感じですね。関西人の性分で普通でもセッションのネタ志向は高めなのですが、こういう時は伝説的なネタセッションが行われる場合があります。

 もう10年以上前になるでしょうか、合宿の深夜に友人の「ウォーハンマー(旧版)やるぞ〜」との声が。「ハーフリングは別キャンペーンでやっているから、ドワーフかな? いや、ノームもいいな」などと思いながら席につきます。そうして、配られたキャラシーの種族欄をふと見ると、マジックで既に“SKV”の文字ぐぁっ! そして、人体イラストの方に目をやると、頭部には某超有名マウスのような大きくて黒い耳が描き足され、おケツから尻尾が。そして、邪悪な笑みを浮かべながらマスターが取り出したのは『ネズミの書』のファイル。そう、これは旧版のファンマテリアルを使用したケイブン・セッションだったのです!


 「うわっ、能力修正ハーフリング以下!」とか「俺のキャリアは“鼠使い”!」、「運命点、当然0や!」やらキャラメイクの時点でかなりハイテンション。セッション開始したらしたで、いきなりマスターがニコニコしながら「スケイブンは強い個体しか生き残れない弱肉強食の世界。優秀な雄しか種付けできない」との前置きが。そして、今回のミッションの報酬は、種付けを1回できる“繁殖券”! 「俺は人間年齢にしたら60過ぎ。この機会を逃すわけにはいかないでチュ〜」やら「ハンショクゥ、ハンショクゥゥ!」みたいな感じでテンションはすでにマックスギア。

 その後、ネズミ捕りに怯えながらも「タマとったるでチュ〜!」と突撃して攻撃を外したり、生け取りにしなくてはいけない人間を食べちゃったり(スケイブンには“黒き飢え”というルールがあり、極度の緊張や興奮状態になると食欲に我を忘れてしまいます。あの人間どこに逃げたでチュ、ゲップゥ)しちゃったりして、テンションは更に上昇! 「魔狩人をネズミ時空に引きずり込め」とか「我らがディーモンプリンス、BBBラットマン復活でチュ〜、ビビビビ!」やら最後は何だかよく判らない世界に突入!!

 極めて好評だったこのセッションはキャンペーンになりまして、我らが栄光のスケイブン・プラトゥーンは、フィミールとメジャーモンスターの座を争ったり、エクゾスケルトンならぬエクゾスケイブンを装着して自爆したり、Love & Piece(愛とバラバラ)と書かれたTシャツを着たトロールに追いまわされて抱き殺されそうになったりしたのです。


 若気の至りと申しますか、暴走しすぎと言うますか、悪酔い集団の馬鹿騒ぎみたいなセッションで、人様には全然全くちっともさっぱりお勧めはできませんが、やたらめっぽう楽しかったです。

 また、異質な存在にものすごく感情移入ができたという思いがあります。普通、キャラクターになりきると言っても限界があります。ドワーフやドラゴンボーンのPCで、魅力的な同種族の異性に慕われるよりも、人間やハーフエルフの異性に好かれる方が嬉しいというのが人間の性。しかし、スケイブン・キャンペーンでは、「じめじめした下水→心地よいでチュ」や「のどかなお花畑→気味悪い。燃やすでチュ」みたいに思考パターンが鼠人間になりきっていました。あれほど、異質だと逆に割り切って感情移入できるのか、それとも人間は心の中に混沌の鼠人間の1〜2匹くらいは飼っているのかもしれませんネ。


 そういう訳で2版の『ネズミ本』は、よくぞやって下さいましたという感じなのです。

 また、スケイブン・キャンペーンに関わらず、『ネズミ本』はGMにとってすごく有用だと思います。なぜなら、スケイブンはエンパイアのどこにいてもおかしくないですし、バリエーションも多く、更にPCの強さに合わせやすいというとても使い勝手のよい敵役だからです。ヴァンパイアは強力すぎますし、ケイオス・ドワーフやダーク・エルフなどはエンパイアに気楽に出せないですしね。エンパイアでのセッションを掘り下げたいのなら『Shades of Empire』が、エンパイア以外でのセッションを楽しみたいのなら『Realm of the Ice Queen』が、敵役のバリエーションを豊富にしたいのなら『Children of the Horned Rat』が断然お勧めです。

 あ、フォローのために真面目な話でしめようとしているんじゃ、ないですよ。ほんま。