『ウォーハンマー3版』続報 その5

 『ウォーハンマーRPG3版』の続報です。Fantasy Flight Game社のサイト更新が早いので、バタバタしていたらえらいことに(笑)。今回は(も?)要点のみの紹介です。



1)マニューバー(Manoeuvres)

 特別な技能などを必要としない行動はマニューバー(Manoeuvres)とされるようです(戦闘時の扱いなどはまだ不明瞭)。3版には物語モード(story mode)と遭遇モード(encounter mode)があって、前者ではマニューバーの使用は制限なし。後者だと、1Rに1回フリー・アクションで可能、または2回目以降行なうには1回につき1疲労点必要とのことです。

 遭遇モードでのマニューバーの例として、移動(Movement)や支援(Assist)などが紹介されています。


2)抽象戦闘

 3版になってマス目の戦術マップを使用しない抽象戦闘に変更されました。ここら辺は和製ゲームでおなじみのエンゲージ・システムを採用しています。PCやモンスターの位置関係は、近接距離(Close)と中距離(Medium)、遠距離(Long)、超遠距離(Extreme)の4種類あり、エンゲージ(Engaged)しているグループの間にトークンを置いて表すようです。例えば、トロール殺しとオーク2体が互いにエンゲージしていれば、彼らの駒をひと固まりに置きます(近接距離)。そして、遠距離からロングボウでオークを射るエルフのPCがいれば、近接戦闘している集団の間にトークンを2個置く(1個で中距離、2個なら遠距離)という具合です。


3)進捗ピース(progress tracker)




 スタンス・メーターに使用するジグソーピースですが、進捗ピースとしてGMの使い勝手のよい道具にもなるそうです。マーカーを置くことで交渉の成功度会いを示したり、食糧の管理などにも利用例が上がっています。また、追跡劇などの対立を表す場合などにも、ピースをつなげた上にパーティーのマーカーと、敵のマーカーを置くことで、成功度合いを示すことができます。まあ、D&D4版の技能チャレンジならば、成功数マーカーと失敗数マーカーで進捗度合いを示すみたいな感じですかね。

 「メモとかでええやん」とか思わなくもないですが、このツールを使用して進捗度合いを判りやすい形でPCにオープンするというのが目的なんでしょうね?


4)種族

 PC用種族の紹介もオープンされました。これは3版の雰囲気を知るためにも重要だと思うので、詳しく訳してみます。


イクランド人

 森に囲まれたライクランドは、エンパイア随一の領邦である。ライクランド人は、他の領邦の住人に比べてより裕福で充分に教育を受け、都会的である傾向が強く、豪商たちは貴族たちと権力争いをしている。ライクランド人は、真のエンパイアの後継者としてシグマーの寵愛を得ていると信じている。

 ライクランド人は、派手さと他人に印象付けようとする姿勢で有名である。男性の衣服は、軍人風の切り込みが入っており、つば広帽子には羽根で飾られている。一方、女性用のドレスはどれもごてごてと派手な作りである。身なりに反して、ライクランド人はよく働き、召集があれば勇敢な兵士となる。彼らの成功は、いかなる環境にも適用できる性質によるものである。

 アルトドルフには既知の世界中から訪問者が訪れ、ライクランド人はコスモポリタンであり、外国人やドワーフ、エルフと付き合う。彼らは他のエンパイア人に比べて狭量ではないので、魔法諸学府もアルトドルフを本拠地にしている。ライクランド人は、他の領邦では洗練されていない田舎者たちが熊手や松明を掲げて批難するような魔術的な行為についても、若干寛容である。もっとも、ライクランド人の多くは、帝国で認められた魔術も混沌の妖術と同じ穴の狢だと思っているのだが。

イクランド人の種族特徴

 彼らのしつけと個性を反映して、ライクランド人は以下の種族的特徴を持っている:

順応性(Adaptable):ライクランド人の転職にかかるコストが1減少する。ただし、コストは0にはならない。

運命の寵愛(Favoured by Fate):セッション中1回、ライクランド人は単一のテストに幸運ダイスを2個追加することができる。



ドワーフ

 ドワーフが頑健な種族であり、4フィート6インチほどの硬太りした体格をしている。彼らは、分厚い革やチェイン・メイル、角付き兜を身に付け、ベルトから戦鎚や斧をつり下げている。ドワーフは髭を伸ばすことにもっとも重きを置いている――その長さと白さは年齢と経験を、髭の編み方と装飾品によって地位を表す。ドワーフたちは、エンパイアの辺境にある山の城塞に住む。彼らは熟練した戦士であり、その腕は薄暗い洞窟の中でも損なわれない。戦いで命を落とさぬ限り、数世紀生き続ける。

 すべてのドワーフたちが、自分の血筋を数えきれないほどの代まで遡って言うことができ、そして祖先が耐え忍んだ侮辱すべてを覚えている――怨恨というものを彼らにとって重要なものなのだ。ドワーフは、滅多に引き下がったり、心変わりしたりしないが、常に誓約を重く見なす。彼らはささいなことに言葉を費やさずつっけんどんな物言いで、ドワーフ以外にはわずかな友人しか得ることがない。しかし、ドワーフと友情を結んだのならば、それは不変のものなのである。

 ほとんどのドワーフが富に対して貪欲であり、どんなちっぽけな財宝でも手放す気がしない。卓越した鉱夫である彼らは、貴金属や宝石――そして鉄より硬く、鉄より軽いグロムリル鉱石を求めて地価を掘り進む。


カラック=アズガラズとライクランドのドワーフ

 最近まで、灰色山脈にはドワーフの共同体はバラバラにしかなかった。灰色山脈には希少な鉱石がほとんどとれなかったからだ。しかし、東方の山から来た若いドワーフの移住者の一団が、ライクランドの街のユーベルスライクの南方の峠に小規模な城塞都市を建設した。彼らはこの城塞都市をカラック=アズガラズ――“恐れ知らずの斧”の城塞と名付けた。このことは、功名をなそうとする野心家の若いドワーフたちにとっては、彼らの冒険的事業の芽を完全に摘もうとする年長者たちの影響下を離れることができるために、大変魅力的であった。カラック=アズガラズの主な役割は軍事拠点である。ドワーフたちは、ここからこの山脈にはびこるグリーンスキンを撲滅させ、栄光をつかもうとしているのだ。

 エンパイアでは、大都市以外はドワーフの姿を目にするのは珍しいことである。ドワーフの匠の技は名高く、ライクランド中でドワーフは鍛冶屋や醸造者、職人の職を見つけることができるだろう。カラック=アズガラズ出身のドワーフは、ライクランド中の町や村を訪れ、新たな故郷の周りの土地について学習する一方、カラックの店の品を充実させるために交易を行なうのだ。多くの都市においてドワーフと人間は、商業においては共に働き、侵略者に対しては肩を並べて闘うのである。


アズガラズのドワーフの種族特徴

 激しい気性と伝統を重んじることを反映して、カラック=アズガラズ出身のドワーフは以下の種族特徴を持つ。

グルングニの子供(Children of Grungni):キャラクター作成時に、カラック=アズガラズ出身のドワーフは以下の基本技能の1つに習熟する:〈規律〉(Discipline)、〈頑健〉(Resilience)、〈武器〉(Weapon Skill)

怨恨(Grudge):カラック=アズガラズ出身のドワーフは、グリーンスキン、もしくは自分を傷つけた敵に対するすべての近接攻撃もしくは遠隔攻撃に、幸運ダイスを1個追加する。このボーナスは、その遭遇の終了時まで持続する。



ハイエルフ

 他の人類よりも背が高く痩身なハイエルフは、尖った耳と金髪かつややかな黒髪に縁取られた繊細で青白い顔立ちをしている。彼らは何世紀も生きて、秘術の知識の研鑽を続ける。彼らは、絹のローブを身にまとい高貴で威厳あるふるまいをするか、戦時では黄金と宝石で飾られた煌めくスケイル・メイルと長い兜を着用する。

 ハイエルフは、選んだ技にその長い人生をそそぐ。ある者は、戦いの技を好み、ある者は卓越した職人になり、ある者は人知を遥かに超えた魔術の研究を行ない、太古の知識を探し求める。彼らは学習を重んじ、他の種族と比べて自分たちは最も啓蒙されているとみなしている。

 彼らの故郷のウルサーンは、不死鳥王と美しき“久遠の女王”によって統治されている。ウルサーンは緑に覆われ白い塔の都市がある魔法の島で、オールド・ワールドの西方の“大海洋”を遥か渡った処にある。エルフに崇められている神がウルサーンを護っている。創造神アシュリアンや職人の神ヴァール、豊穣の貴婦人イシャ、凶暴なカインである。ハイエルフの民は、若い時から誇りをもってウルサーンの軍隊に入り、自分たちの責務を真剣に果たす。

イクランドのハイエルフ

 毎年、ウルサーンの船がライク河を下ってアルトドルフに異国情緒あふれる品物を運んでくる。彼らと共に、不死鳥王の渉外使者がエンパイアとの同盟を確固たるものにするために訪れる。エルフの魔道士が魔法諸学府の進捗を確認しにアルトドルフを訪れ、失われた聖遺物を求めて、エルフの学者と冒険者が森深くにあるエルフの廃墟を探検するためにやってくる。エンパイアの他の地域では滅多に目にすることはできないが、ライクランドではハイエルフは珍しい存在ではない。もっとも、彼らの優雅さと美貌は畏敬の念を未だ引き起こすのだが。

ハイエルフの種族特徴

 彼らの文化的な生まれと重厚な歴史を反映して、ハイエルフのキャラクターは以下の種族的特徴を持つ。

博識(Erudite):ハイエルフは、キャラクター作成時に上級技能の〈教養〉を得る。

イシャに選ばれし者(Isha’s Chosen):キャラクター作成時に、ハイエルフは以下の基本技能の1つに習熟する:〈規律〉(Discipline)、〈直感〉(Intuition)、〈観察〉(Observation)



ウッドエルフ

 ウッドエルフの身体的特徴は同類のハイエルフと類似している。彼らも美と優雅さを備え、卓越した敏捷性を誇る。ウッドエルフは簡単な毛皮を身に付け、木に溶け込むような服装をする。森での生活によって、最も込み入った地形でも跡を残さずに移動する術を習得している。彼らの故郷のロゥレンの森は、エンパイアとブレトニアの間の灰色山脈のふもとに広がる巨大な森林である。部外者はこの神秘の森に足を踏み入れることはできない。強力な魔力で持って護られているからだ。

 ウッドエルフは、同族による小集団で流離い、常にこの森を護っている。彼らは幽鬼のように枝葉に現れ、霧散する前に侵入者に上から矢を撃ち放つ。ウッドエルフはすべての樹木を尊重し、人間やドワーフ、グリーンスキンだろうと森を傷つける者は嫌悪するが、最も深い憎悪は自然界を歪める混沌に取っておく。


イクランドのウッドエルフ

 ウッドエルフはロゥレンの森以外の世界に関心は薄いので、自分たちの森の領域から出ることはまれである。しかし、10年前に女予言者のナイエスが森の死滅を予知し、オリオンとアリエルの両名が森を襲う運命は外の世界のものと連動していると認めた。そのために、両名はウッドエルフをロゥレンの森を超えて敵を狩りだすようにさせた。今やウッドエルフの小集団がライクランドの森を徘徊し、ビーストマンを根絶やしにするために狩りを続けている。時折、目的が同じであれば、人間の大義に手を貸すために森から出てくる者もいる。

 人間の世界を彷徨うウッドエルフも少数存在する。敵を逃がしたや同族の命を救えなかったなど己の小集団の名を汚し場合、己を罰するためにである。また、大昔に灰色山脈に移住した“失われた同族”の伝説もある。それらの末裔がライクヴァルドの森から最も離れた場所に未だ出没するとのことである。


ウッドエルフの種族特徴

 彼らの自然との結び付きと伝統に縛られた文化を反映して、ウッドエルフのキャラクターは以下の種族的特徴を持つ。

自然との結び付き(Nature Bond):ウッドエルフは、森にいる間、戦闘イニシアティブだけでなく、〈観察〉と〈隠密〉判定にも幸運ダイスを1個追加する。

オリオンの寵愛を受けし者(Orion’s Favoured):キャラクター作成時に、ウッドエルフは以下の基本技能の1つに習熟する:〈射撃〉(Ballistics Skill)、〈自然知識〉(Nature Lore)、〈観察〉(Observation)、〈隠密〉(Stealth)



 ウェブサイトにはドワーフの港湾労働者(Dockhand)によるキャラクターメイキングの例をアップされていますが、そちらの紹介は次回にしたいと思います。


 これまでの流れを見ているとキャリアは、生活感にあふれたものも少なくなさそうですね。しかし、種族の紹介を見ると、案外異種族の雑多なキャリアでも問題なくパーティーを組める世界観を提示しているのみたいですね。