4版『Dark Sun』の紹介(その1)

 『Dark Sun Campaign Setting』と『Psionic Power』とうとうゲットしました! ですが、一緒に注文していた発売日が同じ『Dark Sun Creature Catalog』とシナリオは未入手です。


Dark Sun Campaign Setting: A 4th Edition D&D Supplement

Dark Sun Campaign Setting: A 4th Edition D&D Supplement


 現時点で判る範囲で、4版のダーク・サンの紹介をしていこうと思います。今回は『秘術魔法』と『種族』についてです。なお、訳語について無論正式なものではなく、かつ現在も色々思案中でして、以前ブログに載せたものから変更しているものがあります。




 浸蝕の秘術魔法(defiling)によってアタスの自然が損なわれたというのは、ダーク・サンの世界観の大きな特徴です。つまり大きな魔法を行使するのに、他の生命体の犠牲が必要なわけです。旧版ではデファイラー(defiler:浸蝕の魔法の使い手)とプリザーヴァー(preserver:保全の魔法の使い手)が別クラスになっており、デファイラーは魔法を使用するごとに周りを焦土に変えていました。4版ではこれがどうなっているかというと、結構面白いルールになっています。秘術クラスはアーケイン・デファイリングという無限回パワーを持っており、これは一日毎パワーの攻撃ロールまたはダメージ・ロールを再ロールできるという強力なものです。で、代償は20マス以内の味方全員に、微妙に洒落にならない軽減不可の[死霊]ダメージを無条件に与えるというもの。これは良いルールですね。周りの植物を枯らし、小動物を死に至らしめても力を求めるかというキャラクターのジレンマだけでなく、「同じ卓のプレイヤーに犠牲を強いても力をもとめるんかい」というプレイヤーにジレンマを突き付けているわけです。しかも、伝説級になればアーケイン・デファイリングで再ロールした攻撃ロールのクリティカル率が上昇する強力な特技などあり、なかなか心憎いものになっております。


 で、都市国家を支配しているソーサラーキング(魔人王)は強力なデファイラーです。デファイラーの神話の運命としてソーサラーキングがあるかなと思っていましたが、そうではなくドラゴン・キング(竜王)でした。つまり、浸蝕の魔法を極めた者がドラゴン・キングで、その中で都市国家を支配しているのがソーサラーキングの模様です。で、このドラゴン・キングですが、名前のとおり半竜半人の姿をしています。



 AD&Dソーサラーキングも真の姿はこれで、戦う場合は人間形態から変身する者もいました。ただ、4版の先行公開されたソーサラーキングのデータには竜人形態には言及されていなかったです。ここら辺は『Dark Sun Creature Catalog』に載っているんでしょうかね?



 デファイラーの神話の運命がドラゴン・キングなら、プリザーヴァーのものはアヴァンギオン(Avangion)になります。ドラゴン・キングが生命の冒涜者ならば、こちらは生命の守護者でしょうか。で、このビジュアルが、でっかい羽蟻!

 普通は、巨大な鹿とか羊とかちゃうん? でもまあ、よくよく考えてみると、ダーク・サンの世界は爬虫類と昆虫の世界で、馬とか哺乳類の代わりに騎乗用蜥蜴がいますからね。ドラゴン・キングが爬虫類なので、必然的にこちらは昆虫。蟻とか蜂は大量に卵を産むので、豊穣のシンボルなのかもしれません。でも、ないわ〜。



 続きまして『種族』の話。まずは、追加種族のムルとスリクリーンから。


 ハーフドワーフのムルはバリバリの肉体派種族です。外見は筋肉質でヒューマンよりも大柄。そして、無毛で男女問わずたいがいがスキンヘッドです(毛が生えている場合も頭の天辺に黒髪が生えるだけとのこと)。疲れ知らずで72時間活動可能だったり、ムルの種族専用特技以外に、ドワーフあるいはヒューマンの種族専用特技のいずれかを修得できたりします。奴隷用に造りだされた種族ということもあり、剣闘士とか、自由を求める奴隷にとかがステレオタイプのテーマですね。


 続いてスリクリーン。AD&D時代ではかなり無茶苦茶な強さをほこりましたが、3.5版では調整されました。4版では種族間に圧倒的な差をつけないというコンセプトがあり、どんな風に仕上がるか楽しみでしたが、ずば抜けた強力さはないものの、スリクリーン的な特徴は残っており良調整がされていると思います。特質すべきは機動性です。エルフと同じく移動力7で、跳躍では常に助走を行っているとみなされます。4本腕のメリットは、下の2本の腕がサブアーム扱いになって弱体化したものの、種族遭遇パワーでマイナー・アクションでもって、最大3体の敵に爪攻撃を行えます。後、意外にもチャトクチャなどのスクリーン特有の武器への習熟は無くなっていました。ちなみに武器と鎧に関するルールもちょっと意外でした。アタスには鉄が不足しており、骨や黒曜石製の武器が一般的です。鎧も革製が主流。これらの材質のルールですが、4版では鉄製の剣も、骨製のものも性能は一緒となりました。また、鉄製鎧も代替素材でつくられており、存在するというものになっています。例えば、巨大昆虫の外骨格を使用したプレート・アーマーが一般的とかですね。一読して違和感を覚えましたが、ちょっとして納得しました。AD&Dではキャラメイク時の能力値決定を5d4で行ない、種族によりボーナスも通常のものより高めでした。武器が鉄製でないこと、金属鎧を着れないことによるペナルティは、高い能力値で補うことでバランスをとっていたのです。今回は他のワールドと同じなので、武器と鎧が弱体化されたら、バランスがとれないのですね。後、AD&D時代のルールも、すべての武器が鉄製であるという前提で作られていて結構穴があるものでした。最初から木製のクラブはどうするのとか、あご骨から削りだした二枚刃斧のキャリカルは鉄製で作れるのとか? ここら辺の込み入ったルールを導入するより、シンプルにしたことは4版のコンセプトにあっているかと思います。

 スリクリーンに戻りまして、その設定。生来の狩猟種族というものは健在です。しかし、他の人間型種族も獲物とみなすことがあるという設定は無くなっている模様? 『MM3』にもそんな記述はありませんでしたし。ちなみに、AD&Dではエルフの肉が特に好物という設定があり、エルフにはスリクリーンの外骨格の鎧を身にまといこの蟷螂種族に復讐するスリクリーン・スレイヤーという楽しいオプションがありました。ここら辺の確認も『Dark Sun Creature Catalog』待ちでしょうか。



 続きまして他の種族。『PHB』掲載の基本8種族はすべていることになっています。

 でも、ちょっと無茶やんと思わなくもないですね。特にドラゴンボーン。竜人ということでドラゴン・キングと被ります。

 しかし、そこはよくやったもので、旧版に存在したドレイ(Dray)という竜人型種族の設定を流用しています。ドレイはドレゴス(Dregoth)というソーサラーキングが生み出した種族で、ドレゴスと彼の都市国家は、その力を恐れた他のソーサラーキングたちに滅ぼされています(とかいいながら、アンデッドと化したドレゴスは今なお砂海に埋もれた廃墟で活動中)。まあ、妖術にたけた強靭な奴隷兵士という感じで、普通ならモンスター種族ですね。基本のバハムートを信仰するパラディンに最適な種族とは正反対で面白いものです。


 次に取り上げる旧版にはいなかった基本種族はティーフリング。アタスのティーフリングは“無慈悲な砂漠の悪魔”として恐れられているとあります。ティーフリングはアタスで生き残るために、暗黒の勢力(神はいないけど、デヴィルとデーモンはいる模様)と取引したヒューマンの末裔との設定で、この先祖の“血の負債”を払うのが種族的テーマです。で、中にはこの負債は流血で購える考える危険な奴もいるとあります。獲物か雇い主を探して荒野をさ迷う放浪の民という感じで、基本版に比べるとダーク度が増していますね。


 次はエラドリン。エラドリンはアタス版フェイワイルドの“一陣の風の中の国々”(the Lands Within the Wind)の住人になります。この“一陣の風の中の国々”は浸蝕の魔法によってどんどん消滅しており、アタスのエラドリンは故郷を失った者たちという設定です。このため、秘術魔法を捨て、サイオニクスに傾倒しているとあります。アタスでは極めて希少な存在ということですが、なかなか面白い設定ですね。


 旧版で存在した基本種族で最初に取り上げるのはエルフです。エルフは商人でかつ盗人、略奪者である放浪民という感じです。各都市国家では盗品やいかがわしい品物を扱う“エルフ市場”がオールナイトで開催されているとあります。気質としては怠惰で狡猾。自分の氏族しか気にかけない、移り気で信用の置けない連中という感じでしょうか。後、俊足を誇り、騎乗を恥とする文化があるという設定は面白いです。


 次はハーフエルフ。ハーフエルフは、ヒューマン社会とエルフ社会の両方から迫害されているという設定はステレオタイプですが、アタスはこれです。まあ、アタス自体が過酷な世界なので妥当な所ですね。


 次はドワーフ。アタスのドワーフの外見的特徴として目を引くのが、毛がほとんどないということです。髭を誇りにするというのがドワーフステレオタイプですが、アタスのドワーフには髭は生えてないのです。ドワーフが城砦都市を構えていたのは大昔のことで、現在は他種族に混じって暮らしており、建築家や農夫として定住する傾向が強いとのことです。


 基本種族の最期は人喰いの風習のあるハーフリング。たいていのハーフリングは“囲い山脈”(Ringing Mountains)の“森尾根”(Forest Ridge)のジャングルが出身です。砂漠の世界であるアタスでジャングルは珍しいですが、旧版から別に荒野のみの世界ではないのです(とはいえ、ジャングルも普通に過酷な場所とのこと)。ハーフリングは高度な文明を築いた太古の種族の末裔とあります。で、人喰いの風習ですが、これはすべての生物は生き残るために競い合っており、すべての生き物は潜在的な食糧であるという世界観から来ています。ただ、血に飢えた人喰いなわけではないのですね。“森尾根”に外来者がたどり着いた場合、野蛮なハーフリング部族に襲われ貪り食われることはないわけではないですが、最初は命を取らずに捕まえて部族王の前に引っ立てるのが一般的だとのことです。そして、理解力のある部族では、食べないで生かしておくだけの価値が外来者にあるか弁明させる機会を与えるとあります。


 次はダーク・サンでの標準種族であったハーフジャイアント。ハーフジャイアントは、この種族の設定にゴライアスのデータを持ってきた形です。まあ、ハーフジャイアントとゴライアスはデータ的に被りそうですから。まあ、外見的にはムルとゴライアスは、マッチョ禿という点で被っています。ですので、アタスのゴライアスは基本的に髪の毛がふさふさである・・・・・・ということはありませんのであしからず。旧版のハーフジャイアントは移り気というか、精神の安定を欠き影響を受けやすい種族であり、属性が変化するというルールがありました。4版では流石にこういうルールはないですが、激怒したと思ったら爆笑するというに感情がコロコロ変わるとあります。


 アタスの基本的なPC用種族は以上ですね。他にもジェナシ、カラシュター、ミノタウロス(『PHB3』に掲載)が存在するとあります。ジェナシは、アタスでは元素の力が強いからですね。カラシュターは、サイオニクスに特化したヒューマンみたいな扱いですね。ミノタウロスは元素の力でもってソーサラーキングに対抗しようとした、獣頭のジャイアントの教団の末裔とあります。



 『秘術魔法』と『種族』の紹介は以上です。次回は『クラス・オプション』と『都市国家』の案内でもしようかと思っています。