『アゲインスト・ジェノサイド』の紹介

 今回はウォーハンマー翻訳チームでお世話になっている岡和田さんの『ガンドッグゼロ』のリプレイ『アゲインスト・ジェノサイド』の紹介です。


ガンドッグゼロ リプレイ アゲインスト・ジェノサイド (Role&Roll Books) (Role & RollBooks)

ガンドッグゼロ リプレイ アゲインスト・ジェノサイド (Role&Roll Books) (Role & RollBooks)


 『ガンドッグゼロ』は個人的に現代ミリタリーものが少々苦手なので手に取ったことがなかったのですが、本作は大変面白かったです。『アゲインスト・ジェノサイド』(反大虐殺)という題名のとおりに民族問題にからむ大虐殺を阻止する話なのですが、勧善懲悪ものではありません。絶対的な正義など存在しない灰色の世界で、ピカピカの正義の味方などではまったくない“殺し”を生業とするPCたちが泥まみれ血まみれで奮闘する話です。本の帯に「情け無用!!(ノー・マーシィ)」とありますが、これはどぎついバイオレンスを売りにしているのではありません。暴力的な世界にGMとプレイヤーたちが真摯に向き合っている姿勢を指していると理解しています。こういうのは、個人的に大変馴染みます。


 このリプレイ本は表紙からしてかなり異色ですが、内容に関してもそのスタンスが他のものとは異なるように思います。

 TRPGは色々な遊び方が可能だと思いますが、日本では主に「アニメ・漫画文化」を土台として遊ばれているかと思っています。『ガンドッグゼロ』も、ミリタリー色の強いアニメや、ガンアクション漫画などを意識してプレイされている方が多いのではないかと推測します。

 しかし、本作はそうではないと思います。漫画に例えるなら、本作は、「アニメ・漫画文化」の土台にノワール要素とミリタリー要素を加えた『ブラックラグーン』のようなガンアクション漫画ではありません。現実の戦争を漫画という媒体で表現した小林源文の劇画にスタンスが近いと思います。映像に例えれば、アニメではなく実写映画、それもハリウッド大作ではなく無名俳優を使った怪作のような感じですか。

 でも、フレイバー重視で、ゲームとして成り立っていないかというと、そういう訳ではまったくありません。TRPGならではの意外性や、PCとNPCの腹の探り合い(PC同士のも!)など読んでいて面白いです。

 本作は異色だから駄目なのではなく、異色だから価値があるのだと思います。善悪の定まらない灰色の世界の陰謀劇は、他のリアル系TRPGの参考になるでしょう。また、ガンアクションファンやミリタリーファンでなくても、TRPGゲーマーとしての幅を広げたいと願う人にとって、本書は手に取る価値があると思います。


 ともかく、こういう毛色の違うリプレイ本を作り上げた岡和田さん、出版してくれた㈱新紀元社は凄いと思います。