『冒険者の宝物庫2』の紹介

 今回は翻訳のお手伝いをさせていただいた『ダンジョンズ&ドラゴンズ4版』のサプリメント冒険者の宝物庫2』の紹介です。


冒険者の宝物庫II (ダンジョンズ&ドラゴンズ サプリメント)

冒険者の宝物庫II (ダンジョンズ&ドラゴンズ サプリメント)


 これは『冒険者の宝物庫』に続くアイテム集です。ホビージャパンのウェブサイトにプレビューも掲載されています。


http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/news/advv2/index.html


 基本的にD&D4版は、クラスや種族、アイテムなどが特定のものだけ使われるようなことを避けるようにデザインされていると思います。多彩な武器があるけれど、ロングソードかグレートソードが強力でこれ以外はほとんど使われないなどということは無くそうとかそういう感じですね。例えば、3.5版では使用頻度が少なかったダガーですが、4版はローグというクラスの存在によって重要なアイテムになっています。他にも特定の武器類を強化する特技や伝説の道の特徴などで、特定の武器に集中しないように選択の幅を広げています。


 そして、忘れていけないのが魔法のアイテムです。4版になって魔法のアイテムは、特定グループの武器や鎧に限定されるものがほとんどになりました。これによって選択の幅がさらに広がります。例えば、エグゾールテッド・アーマーという1日に一回だけ治癒能力を大幅にブースとすることが可能な鎧がありますが、これはチェイン限定です。【筋力】の高いウォーロードや武闘派クレリックにとって特技でもってスケイル・アーマーに習熟することは簡単なのですが、この魔法のアイテムの存在によってチェイン・メイルがスケイル・アーマーより劣る鎧であるということは一概に言えなくなっています。無論、指揮役の鎧はエグゾールテッド・アーマーしかあり得ないというものでもありません。何を優先させどれを選択するかは、プレイヤーの判断に委ねられているわけです。



 『冒険者の宝物庫2』によって多数の魔法のアイテムが追加され、選択の幅がさらに広がりました。『プレイヤー・ハンドブック2』で追加された新クラス用のアイテムも多量に追加されています。


 さらに新機軸としてアイテム・セットという概念が追加されています。これは、特定のシリーズのアイテムを複数装備する毎に、何らかの利点が得られるというものです。特に集団用セットというのが面白いです。これは、パーティの中にそのシリーズのアイテムを装備している者の数によって利益を得られるものです。何か戦隊モノっぽくてよいですね。



 とりあえず、パワープレイ志向のプレイヤーには必須のサプリメントだと思いますよ。翻訳していて個人的に一番ヤバイと思ったのは、魔法の矢弾です。消費型だからか知りませんが、かなりエグイ。攻撃をヒットさせたら付随効果を発するのですが、目標の隣接マスの敵に問答無用にダメージを与えるモノとか、目標を問答無用で“眩惑状態”にしたりするモノとか、目標の隣接するマスに瞬間移動できるモノとか、目標の近くの味方たちの攻撃ロールにアイテム・ボーナスを与えるとか。攻撃する目標から自動的に戦術的優位を得るモノは、さすがにアップデートで修正されるかなとか思っていましたが、まだされていません(笑)。


 強力な魔法のアイテムが追加されていますが、『冒険者の宝物庫2』はただのデータ集だけではありません。『冒険者の宝物庫』と比べてフレーバーがかなり充実しています。ウェブサイトにも公開されていますが、アイテムの設定とシナリオ・フックが載ったコラムが追加されたりしています。4版になってプレイヤーがほしいアイテムはリスト化してDMに渡し、DMは報酬や戦利品でそれらを用意するという形を推奨しているわけですが、これって何だか味気ないですよね。このコラムのシナリオ・フックを活用すれば、アイテム入手までが1つの冒険になります。魔法のアイテムの取り扱いの指針として、嬉しい追加だと思います。後、セットアイテムにはそれぞれアーティファクトと同じくらいの量の設定が付いています。


 最後にアイテムの和訳名ついて。今回はかなりはっちゃけたものもあります。私たちの翻訳チームのボスの待兼さんがアイテム名の「厨房化」を推進しようと後押ししてくれ、みんなで結構フリーダムにしてみました。例えば、プレビューに載っている死せるプライモーディアルの精髄を宿す魔剣、ストームバイター・ウォーブレードの和訳は「“剛剣”嵐噛み(アラガミ)」です。プライモーディアルは正確には荒神では全くないのですが、まあ勢いで(笑)。あ、もちろんやりすぎたのは、編集に却下されましたデスヨ(笑)。